当院からのメッセージ
生理は、女性のからだだけに起こる特別な現象です。10代前半〜50歳を迎える頃までに起きる現象であり、女性にとっては人生の約半分にあたる40年間もの長い間向き合うとても大切なモノです。
時には不快な症状を伴い、煩わしいと感じてしまうことが多い生理ですが、女性の身体にとても大きな影響をもたらす、あなたによっては重要な存在であることを覚えていて下さい。
なぜ生理が起こるのか?
生理には一旦どのような役割があるのか?
これまで生理と長く向き合ってきた女性でも、生理について知らないことは多いのではないでしょうか。
盛岡市の今井産婦人科内科クリニックでは、患者様が抱える女性特有の悩みに向き合いながら健康相談を承っております。「生理の大切さ」を改めて知って頂けると幸いです。
月経異常
生理のメカニズム
女性の身体は約28日の間に、「1:卵胞期」→「2:排卵」→「3:黄体期」→「4:生理(月経)」という生理周期の流れがあります。女性の子宮膜は、受精卵を迎えるための準備として、排卵に合わせて徐々に厚く成長していきます。着床が起こらない場合は、その厚く成長した子宮内膜がはがれ落ちる現象が起きます。それが、生理時の出血です。
生理不順(月経不順)
- 生理の期間が長過ぎる、短過ぎる。
- 生理の周期が長過ぎる、短過ぎる。
- 生理周期がバラバラで安定しない。
毎月きちんと28日や30日型で生理がこない場合、それが必ず異常という訳ではありません。
たとえば「先月26日目に生理がきて、今月は少し遅れて36日になった」というのは正常範囲と言えます。しかし、毎回40日~50日型であるという方、もしくは20日毎に月経があるというの方は、月経異常であると言えますので、一度、婦人科にてご相談頂くことをオススメします。
稀発月経と頻発月経
39日以上、間があいてしまう長い周期を稀発(きはつ)月経といいます。稀発月経でも排卵があれば、妊娠・出産が可能ですが、無排卵周期になっている場合も多くみられますので注意が必要です。
稀発月経の原因は、卵巣の働きが不十分で、ホルモンが順調に分泌されていないことが考えられます。1~2ヵ月様子をみても状態が改善されない場合は、一度、ご相談頂けると幸いです。
稀発月経とは対照的に、生理の周期が24日以下という短い周期になっている状態を頻発(ひんぱつ)月経といいます。原因として考えられるのは、卵巣の働きが落ちているか、ストレスなどによってホルモン分泌の乱れが起こっているケースです。また、黄体機能不全といって、黄体ホルモンの分泌が不十分なために、排卵日から生理が始まるまでの期間が短くなることも考えられます。
黄体ホルモンの不足は、子宮内膜の成長に影響を及ぼしてしまうので、妊娠しにくい環境を作ってしまい、流産が起こりやすい体質になってしまうこともあります。
いずれにせよ、妊娠・出産を望んでいる方は、早めに婦人科を受診しましょう。
月経が90日以上こない(無月経)
生理不順の中でも、90日以上、月経がこない状況を無月経といいます。無月経は単なる生理不順よりも注意が必要です。
無月経は排卵が発生しない状態にあり、ホルモン機能が低下している状態(あるいは殆ど停止状態)であることが多いです。この無月経の状態が7ヶ月以上続くと、ホルモンの失調がますます強くなってしまい、排卵障害などのホルモン異常が起こります。
無月経の期間が3ヵ月以上続いたら、必ず婦人科を受診するようにして下さい。
生理痛・月経困難症
こんな症状・お悩みはありませんか?
- 下腹部痛・腰痛がある。
- おなかに張りがある。
- 吐き気・頭痛の症状がある。
- 疲労感・脱力感がある。
- 食欲不振である。
- イライラや憂うつな日が続く。
- 下痢の症状がある。
生理期間中に、生理に伴って発生する病的症状を「月経困難症」と呼びます。
一般的には、それらの症状を「生理痛」と総称されることが多いですが、腹痛などの生理痛の他にも上記のような様々な症状が出やすくなります。
当院へ通院されている患者様の中には、生理に伴い「痛みが強く、横たわっていないと耐えられない」「症状が辛く、学校や会社に行けない」「立っていられず、家事すらも出来ない」というご相談を頂くことも少なくありません。
月経困難症のタイプ
器質性 月経困難症
子宮の疾患(子宮内膜症・子宮筋腫・子宮腺筋症など)が原因である月経困難症を、器質性(続発性)月経困難症といいます。一般に20代後半から多くなり、痛みの症状としては生理初日から3日目頃を過ぎても継続し、生理期間以外に痛みが生じる方もいらっしゃいます。
治療としては原因疾患の治療を行うということになりますが、その原因疾患に対しての治療は行わずに、鎮痛剤や漢方薬での対症療法を行い、経過を見させて頂く場合も御座います。
機能性 月経困難症
「機能性月経困難症」は、一般に思春期から20代前半に多くみられる症状で、明らかな疾患が無い月経困難症を言います。生理開始から間もない思春期女性に多く、成長とともに軽快することも多いです。
生理が始まるとプロスタグランジンと呼ばれる物質が分泌され、陣痛のように子宮を収縮させ、子宮内膜を剥がし、子宮から排出させるように働きます。これは大事な働きですが、プロスタグランジンの分泌量が多かったり、子宮筋の感受性が高いなどの場合には、子宮筋が過剰に収縮し強い生理痛となります。
特定的な疾患が見つからないだけで、子宮内膜症のごく初期の段階というケースもあるということが、機能性月経困難症で注意したい点です。
過多月経
量が多いのは病気のサイン?
少しくらい経血量が多くても月経だから仕方がないと思いこんでいらっしゃる患者様が多いですが、それは【過多月経】という症状の可能性があります。過多月経のかげには女性特有の病気が潜んでいることがありますので注意が必要です。
他の人と比べて経血量が多いか、少ないかというのは分かりにくいものです。
初経年齢 | 平均12歳 |
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月経周期日数 | 25~38日 |
出血持続日数 | 3~7日間(平均5日間) |
1周期の 総経血量 |
20~140mL |
閉経年齢 | 45~56歳(平均50.5歳) |
最も多い日でもナプキンを2時間おきにかえるくらいが一般的のようですが、これに対し、経血量が非常に多く、ふだんの生活に支障をきたすような場合を「過多月経」といいます。おもな原因としてホルモン分泌の異常、子宮などの病気があります。経血量や周期のみだれ、月経痛などから思わぬ病気が見つかることもありますので、早めにご相談下さい。
過多月経チェック
STEP1
- 昼でも夜用のナプキンを使う日が3日以上ある。
- 普通のナプキン1枚では、1時間ももたない。
- 経血にレバーのような大きなかたまりが混じっている。
- 以前より経血量が増え、日数も長くなった。
↓ 1つでも該当している方はSTEP2へ!
STEP2
- 血液中の鉄(Fe)が少ないと言われてことがある。
- 立ちくらみ・めまい・動悸・息切れがする。
- 疲れやすく、身体がだるい日が多い。
- 頭痛や頭が重い感じがある。
上記にチェックがついた方は、「過多月経」や「過多月経による貧血の可能性」があります。
月経は女性の健康のバロメーターともいえます。思い当たる症状がみられる場合は、早めに当院へご相談下さい。
子宮内膜症
子宮内膜症とは
子宮の内側を覆う粘膜を子宮内膜といいます。
子宮内膜症は、子宮内膜によく似た組織が子宮以外の場所に発生し、増殖していく病気です。
発生しやすい場所は、直腸と子宮のすき間(ダグラス窩)、膀胱と子宮の間(膀胱子宮窩)、卵巣、卵管、子宮筋層、骨盤腹膜などですが、まれに肺や胸膜に発生することもあります。
増殖した組織は子宮内膜と同様に生理のときに脱落し、出血を起こします。それがおなかの中にたまって炎症を起こし、周囲の組織と癒着するなどのトラブルを引き起こします。特に卵巣に子宮内膜症ができると、チョコレート色の古い血液がたまった袋状となるため、チョコレートのう胞と呼ばれます。
子宮内膜症の症状
- 強い生理痛がある。
- 吐き気や嘔吐、下痢の消化器症状がある。
- 腹痛の症状がある。
- 性交痛・排尿痛がある。
- 過多月経・不正出血がある。
最近は20代・30代の女性に増加している子宮内膜症は、妊娠しにくくなったり、不妊症になるケースも0ではありません。該当の症状がある人は、できるだけ早めに当院へご相談下さい。
治療法について
対症療法
鎮痛剤
下腹部痛や腰痛、頭痛などの痛みの軽減に使います。日常生活に支障をきたすほどの痛みがある場合は、痛みが強くなる前に服用すると効果的です。
漢方薬
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)などの漢方薬で症状を和らげます。
鎮痛剤や漢方薬は、一時的に痛みを緩和させるためのものです。
子宮内膜症や月経困難症のそのものを治療したり、進行を止める場合は、別の手法が必要です。
内分泌療法
GnRHアナログ製剤
GnRHアナログ製剤には、GnRHアンタゴニスト(GnRH受容体に結合できなくさせる薬剤)とGnRHアゴニスト(GnRH受容体を減らす薬剤)の2種類があります。GnRHアゴニストは投与初期にエストロゲンの分泌が一時的に増えてから減少するという特徴があります。
GnRHアンタゴニスト:錠剤レルミナ錠40mg
GnRHアンタゴニストのレルミナ錠は、子宮内膜症の治療薬として使用することができるお薬です。子宮内膜症にかかわる女性ホルモン(エストロゲン・プロゲステロン)の分泌を抑えることで、無月経状態を作り、子宮内膜症による疼痛を抑えます。
GnRHアゴニスト:リュープロレリン酢酸塩注射用キット「あすか」
GnRHアゴニスト:リュープロレリン酢酸塩というお薬を注射する治療です。卵巣の活動を司どるGnRHというホルモンの働きが一時的に停止して閉経状態となり、卵巣からのエストロゲン分泌が低下します。この作用によって、子宮内膜症や子宮筋腫の病変を抑え、痛みや過多月経などのさまざまな症状を軽減させます。
注射部位が赤く腫れたり痛みを感じることもあります。また、副作用として更年期や閉経後の女性に起こりやすい更年期症状がみられる場合もありますので、異常が見られた場合は速やかにご相談ください。
子宮内黄体ホルモン放出システム(IUS)
ミレーナ
ミレーナ(IUS)は子宮内に装着するお薬です。子宮内で放出される黄体ホルモンが子宮内膜に作用することで、厚くなるのを抑えることができます。それによって、生理時の出血を減らすことが可能です。また、生理痛の症状を抑える効果が期待できます。
正しく装着されていることを前提として、効果を5年間持続させることができます。
低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤
LEP(低用量ピル)
LEPは下記で解説致します。ご覧ください。
LEP(低用量ピル)
保険適用可能なLEP製剤
月経困難症・月経前症候群(PMS)・子宮内膜症などの治療薬として保険適用が可能な低用量ピルをLEP製剤と呼びます。
保険外診療で使用されるOC(低用量ピル)と保険が適用されるLEPは区別されますが、その特性には違いはありません。同一カテゴリーの薬剤であり、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン (プロゲステロン)の2つの配合剤です。
機能性月経困難症などの症状は、単に器質的な疾患が見つからないだけで、実は子宮内膜症のごく初期の段階という場合もあることです。このような場合にも、低用量ピルやLEP製剤は有効とされていますので、鎮痛剤の効果が不十分な場合には試みていい治療法といえます。
当院で処方するLEP製剤
- ヤーズ配合錠
- ヤーズフレックス配合錠
- ルナベル配合錠(ULD・LD)
- フリウエル配合錠(ULD・LD)
- ジェミーナ配合錠
- ドロエチ配合錠
LEP服用時の注意点
飲み始めの注意
服用をはじめて1〜2ヶ月は、次のような症状が起こることがあります。
- 不正性器出血(服用中に起こる軽度の出血)
- 吐き気
- 頭痛
- 上腹部の痛み
- 乳房の張り
症状がひどい場合は、早めにご相談ください。
気をつけたい重大なトラブル(頻度は少ないが、生命に関わる重大な副作用)
血管の中に血液の塊ができる病気を血栓症と言います。
ごく稀にではありますがLEP製剤の服用は、一般の方よりも血栓症のリスクを高めるとされています。
下記のような症状が現れた場合は、すぐに服用を中止して下さい。
- 突然、脚に痛みや腫れの症状が出てきた。
- 手足に力が入らない、麻痺のような感覚がある。
- 突然の息切れ、胸の痛みを感じる。
- 激しい頭痛、喋りにくさ(舌のもつれ)
- 突然の視力障害(見え難い、視野が狭い)
特に、足の痛み・腫れ・痺れ、また発赤・ほてりの症状、そして頭痛、嘔吐・吐き気は、血栓症の疑いがあります。
服用を中止して、早急にご相談下さい。