当院からのメッセージ
子供を望んでいるカップルにとって妊娠は非常に喜ばしいことです。しかし、そうでないカップルにとっては、予定外の妊娠は多くの不安を強いられる出来事でもあります。特に女性は心身ともに大きなダメージを受けます。望まない妊娠を防ぐには、どうすればいいのでしょうか?
それには、まず女性自身が避妊に対する意識と意思を明確に持つことが大切だと考えます。自らの人生に責任を持つためにも、積極的に避妊について考え、あなたに合った確実な避妊方法を選択できるようにしましょう。
盛岡市の今井産婦人科内科クリニックでは、女性が主体で行う避妊法-低用量ピルについて、患者様の理解を深めるための情報を配信して参ります。「あなたらしく生きるための一歩」を応援したいという気持ちを込めて、当院がサポートさせて頂きます。
OC(低用量ピル)について
低用量ピルって、どんな薬?
OC(低用量ピル)は女性の卵巣から分泌される2種類の女性ホルモン(卵胞ホルモン、黄体ホルモン)が含まれた錠剤です。女性は周期的に 排卵が起こりますが、ピルは1日1錠を21日間飲むことによって、 主に排卵を抑えて妊娠を防ぎます。
ピルは含まれる卵胞ホルモンの量により、高用量、中用量、低容量 という呼び方をします。ホルモン量が少なくなるほど副作用も少なく安全性は高くなります。
ピルを飲むとどうして避妊できるの?
女性の性周期は、視床下部・下垂体という脳の中の小さな器官でコントロールされています。血液中に女性ホルモンが少なくなると、視床下部・下垂体は卵巣に「女性ホルモンをつくりなさい」と指示を出します。これにより、初めて卵巣は働きだし、卵胞が大きくなり、その卵胞から女性ホルモンが 作られるのです。そこでつくられた女性ホルモンは血液中に入り、脳へ到着します。すると視床下部・下垂体は、「もう十分女性ホルモンが出ているな」と、指令を出すのを止めるのです。このように脳と卵巣は互いに調節し合っています。
ピルには卵胞ホルモンと黄体ホルモンという二つの女性ホルモンが含まれていますが、こういう仕組みがあるところにピルを飲むと、ピルに含まれている女性ホルモンが血液にのって脳へ到着します。 視床下部・下垂体はピルに含まれているホルモンと、女性が卵巣の中で作り出すホルモンを区別することができませんので、脳は卵巣が十分働いて女性ホルモンを出していると錯覚してしまいます。したがって、卵巣に対してホルモンをつくるよう指令を出さなくなります。
卵巣は視床下部・下垂体からの指令がなくては働くことができません ので、卵巣が育つことがなく、ホルモンも作られることがなく、妊娠するための排卵も起こらないのです。これは、妊娠している間、卵胞の成熟と排卵が止められているのと同じ仕組みです。
さらに、ピルは子宮内膜に働きかけ受精卵が着床しにくい状態にしたり、子宮の入り口(子宮頸管)から出る粘液に変化を及ぼして精子の侵入を妨げるなど、避妊効果を高める働きがあります。
ピルの主な作用
*その1:卵胞の発育・成熟と排卵を阻止する。
*その2:子宮内膜に働きかけ、受精卵が着床しにくい状態になる。
*その3:子宮の入り口(子宮頸管)から出る粘液が濃く硬くなり、精子が進入しにくくなる。
ピルの効果
ピルをきちんと正しく飲めば、ほぼ100%の避妊効果が期待できます。(例えば1年間に1000人の女性が飲み続けたとして、妊娠するのは1人だけ)ただし、ピルには「性感染症の予防効果はない」ということを決して忘れてはいけません。性感染症の防止にはコンドームを使用することが大切です。
OC(低用量ピル)の服用方法と費用について
初めて飲むとき
月経第1日目から飲み始めるピルと、月経の始まった最初の日曜日から飲み始めるピル(ただし服用開始後1週間は他の避妊方を併用) があります。どちらにしても21日間ホルモンが入った錠剤を1日1錠、 どの時間帯でもかまいませんが、毎日ほぼ同じ時間帯に飲みます。 その後、21錠製剤の場合は7日間飲むのをやめ(休薬)、28錠製剤の場合は7日間プラセボ錠(ホルモンが入っていない錠剤)を続けて飲みます。
休薬またはプラセボ錠を飲んでいる間に月経のような出血がありますが、これに関係なく1周期28日としてこれを繰り返します。 このリズムを繰り返している間は避妊効果が持続します。
避妊効果を維持するには、飲み忘れをしないことが大切です。
当院で提供している避妊ピル
- アンジュ 28錠
- トリキュラー 28錠
- マーベロン 28錠
- ファボワール 28錠
- シンフェーズ T 28錠
こんな場合はいつから飲み始める?
*出産後:
出産後4週以降から飲み始めることができます。ただし授乳をしている場合は完全に断乳してから飲み始めましょう。
*流産後:
流産後7日以内に飲み始めるのが理想です。
*人工流産後:
初期中絶の場合は術後以7日以内から、中期中絶の場合は産後と同様4週以降から飲むことができます。
ピルを飲んでもいい人とは
出産できる年齢に達した方で、患者様自身が健康体であれば、ピルの処方ができます。
特に下記のような方には、ピルをお勧めします。
*いまは妊娠したくない、と考えている女性
*望まない妊娠を高い効果で防ぎたい女性
ただし、「授乳中」「原因不明の性器出血がある」「血栓症・脳卒中・心筋梗塞にかかったことがある」「血圧が高い」「乳癌・子宮頸癌にかかっている(またはその疑いがある方)」などはピルを飲むことができません。また、タバコを吸う女性にもお勧めできません。 詳しくは、一度当院へご相談下さい。
ピル処方の費用(自費診療となります)
初診料 | 1,000円(税別) |
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再診料 | 500円(税別) |
1シート | 2,300円(税別) ※ ジェネリック製剤は2,000円(税別) |
ピルのメリット
避妊以外の健康へのメリット
ピルを飲むことによって、月経痛や月経量が軽くなり、月経周期も規則的になります。また、卵巣癌や子宮体癌のリスクが減ったり、骨盤内感染症や子宮外妊娠などが減るという避妊以外の効果も報告されています。
月経に関するメリット
・より規則的に月経(出血)が起こるようになる。
・月経痛が軽くなる。
・月経量が少なく、期間も短くなることが多い。
・鉄欠乏性貧血の発生率が減る。
排卵が抑えられることによって起こるメリット
・卵巣嚢胞の発生率が減る。
・子宮外妊娠の発生率が減る。
長い期間服用することによって起こるメリット
・良性乳房疾患や子宮内膜症の発生率が減る。
・子宮内膜癌、卵巣癌の発生率が減る。
ピルのデメリット(副作用)
ピルというと副作用が心配という方も多いと思います。開発初期と比較すると現代のピルは安全性が高くなっていることは事実です。しかし、患者様によっては、服用開始時に気持ち悪くなる・吐いてしまう・乳房が張る・頭痛がする・不整出血が起こるなどの症状が表れることがあります。
また、一番副作用として注意が必要なのは、『血栓症』です。
血栓症とは
血栓症とは、血管の中で血液が固まってしまう症状で、循環障害を引き起こす病気です。血栓症が引き起こす代表的な病気としては、心筋梗塞・脳梗塞・下肢の静脈血栓症・肺塞栓などが挙げられます。血栓症の症状は、血栓の生じる血管・部位によって様々です。また、症状の軽度・重度は患者様によって異なります。
低用量ピルを服用している方は、服用していない一般の方と比較すると「血栓症」になるリスクが高いと言われています。もちろん服用された方が、簡単に血栓症を発症するという意味ではありません。 注意事項を理解した上で、使用方法をしっかりと守りながら、服用するようにしましょう。(血栓症の発症は、ピルを服用する期間の長短とは関係ありません)
ACHES|血栓症の発症を知らせる症状
血栓症は自覚症状として現れるのが遅い病気と言われています。炎症などによる痛みによって気付くケースはほとんどなく、症状がないまま血の塊が肺に到達し、詰まってしまう肺塞栓になって違和感を感じることが多いようです。
しかし、肺塞栓の症状がでる以前の段階で、血栓症の疑いに気づく症状があります。
その症状の頭文字をとって、【ACHES】(エイクス)と呼ばれています。
- 激しい腹痛(Abdominal pain)
- 息苦しさ、胸が押しつぶされるような痛み(Chest pain)
- 激しい頭痛(Headache)
- 見えにくい、めまい(Eye problems/speech problems)
- ふくらはぎの痛み、むくみ(Severe leg pain)
以上の自覚症状がある際は、血栓症の可能性が高いと言われています。
低用量ピルを使用している方は、服用を中止して直ぐに救急医療機関を受診してください。
早い段階で異変に気付くことができれば、重篤な症状を事前に防ぐことが可能です。
低用量ピル自体は、避妊薬や生理周期の安定などで使用される方が多い、非常に効果的な医薬品です。
正しい知識と適切な生活習慣のもとに、服用することが大切です。
特に注意が必要な方
・タバコを1日に15本以上吸う方
・手術の前後など、寝たきりの生活をしている方
・糖尿病や高血圧などの持病がある方
・過去の既往歴、家族歴から体質的に問題がある方
以上の方は、血栓症になるリスクが高いです。
事前にしっかりと問診をしていきます。