当院からのメッセージ
高齢者となれば病気と無縁の生活は考えにくいものです。私たちは個人差はあるにせよ、確実に老化していきます。身体の機能は次第に衰え、免疫力・抵抗力は低下していきます。高齢者の方は高血圧や糖尿病といったいわゆる「生活習慣病」が多いとされていますが、婦人科疾患の中でもその代表格となる病気や症状があります。
今井産婦人科内科クリニックでは、高齢女性の婦人疾患によるご相談を承っております。病気にかからず健康的な暮らしを送るために、定期的な検診をおこない、事前予防・早期発見につとめていきましょう。皆様が生き生きとした老後を迎えられるように、お力添えさせて頂きます。
骨盤臓器脱(性器脱)
加齢に比例して有病率が高くなる
骨盤臓器脱とは、膀胱・子宮・直腸といった骨盤臓器が膣の入口から飛び出てきてしまう状態をさします。
骨盤では筋肉(肛門挙筋)や筋膜などで膀胱・子宮・直腸を支えていますが、おもに妊娠・出産で肛門挙筋・筋膜・神経などが損傷を受けると、骨盤臓器の支持機構が破綻して膣の入口から骨盤臓器が落ちやすくなります。肥満、慢性的な便秘や咳なども助長因子といわれています。
膀胱が落ちれば膀胱瘤、子宮が落ちれば子宮脱、直腸が落ちれば直腸瘤と呼び、1つの臓器だけが落ちてくることもあれば、複数の臓器が落ちてくることもあります。
主な症状
- 陰部下垂感がある。
- 陰部にピンポン玉のようなものが触れる。
- 椅子に座るとボールの上に座っている感じがする。
- トイレが近い・尿が出しづらい・排尿してもすっきりしない・尿が漏れてしまう。
- 便秘に悩まされる。
以上のような、膀胱や直腸に関連した症状が出ることもあります。
症状がひどくなると、飛び出てきた臓器を手で戻さないと、排尿や排便がしづらくなることもあります。
検査・治療について
1:尿検査
血尿・炎症の有無などをチェックします。
2:診察
脱の部位、程度、膣粘膜の状態などをチェックします。
3:画像診断
脱の部位、程度を画像でも確認します。骨盤内病変の有無も確認できます。
4:残尿測定
排尿障害による残尿の有無をチェックします。専用機器を下腹にあてるだけで残尿量がわかります。
根本的に脱を修復させるためには手術が必要となります。
骨盤臓器脱(性器脱)の治療法としては、ペッサリー療法という従来の手術が検討されます。ペッサリー療法とは、ペッサリーと呼ばれるリングを腟の中に入れる手術です。ペッサリーに子宮が引っかかって、下がってくるのを抑えることができます。
ペッサリー療法では改善しない場合(または不満足な場合)は別の手術として、ポリプロピレンメッシュシートを使用する手術が主流になってきています。ポリプロピレンメッシュのテープを尿道の下に通して、ぐらつく尿道を支える手術を行います。体への負担が少なく、長期成績も優れています。
脱が軽度であれば脱の悪化予防や症状の改善を目的に、骨盤底筋体操を行います。身体への負担はほとんどありません。根気よく続ける必要があります。
尿もれ(尿失禁)
成人女性の約30%が経験
尿もれ(尿失禁)とは、自分が排尿したいと思っていなくても勝手に尿が出てしまうことをいいます。
尿もれがあれば不快な思いをするのはもちろん、トイレのことばかりが気になってしまい、外出を控えたり好きな運動ができなかったりと…生活の質を落としてしまうことにもなりかねません。
尿もれは、成人女性の3人に1人が経験している一般的な症状であると言えます。はじめての尿もれに驚き、当院を受診する方もいらっしゃいます。また、パッドを何年も使い我慢できなくなって受診する方も多くなってきました。
歳のせいだからと症状改善を諦めてしまっている方、また、恥ずかしくて誰にも相談できずに独りで悩みを抱えている方も多いようです。尿もれ(尿失禁)の種類・程度などによって、治療法は異なりますので、まずは一度当院へご相談下さい。
診断と治療について
腹圧性尿失禁
お腹に力が入った時に、不意に尿が漏れてしまうタイプの尿失禁を「腹圧性尿失禁」と呼びます。
- 咳やくしゃみ
- 笑う
- 運動中(走る、ジャンプ)
- 重い物を持ち上げたタイミング
以上のような動作をした際に、尿漏れを生じます。
尿道周囲の支持機構の破綻や尿道そのものの機能低下が原因でおこり、女性にはもっとも多い尿漏れのタイプです。肥満の方や最近急に太った方では、減量が有効なことがあります。
治療法としては、骨盤底筋体操で尿道のまわりにある外尿道括約筋や骨盤底筋群を強くすることで、改善が期待できます。骨盤底筋体操で改善がみられない場合、ポリプロピレンメッシュのテープを尿道の下に通して、ぐらつく尿道を支える手術を行います。体への負担が少なく、長期成績も優れています。
切迫性尿失禁
膀胱が自分の意に反して収縮することが原因となる尿失禁を「切迫性尿失禁」と呼びます。
- 突然、強い尿意を感じる。
- トイレに駆け込んで、直前で間に合わない。
- 力を入れていないのに漏れてしまう。
以上のような方は、過活動膀胱という病気により尿漏れが起こっている可能性が高いです。
治療法としては、膀胱の収縮を抑える薬を中心とした薬物療法が有効です。抗コリン薬やβ3(ベータスリー)受容体作動薬などが使用されます。
尿失禁の種類や程度により、治療法は様々です。
尿もれ(尿失禁)は生命に直接影響するわけではありませんが、いわゆる生活の質を低下させてしまう病気です。
困ったなと思ったら、恥ずかしがったり、年齢的な問題だから…と諦めたりせずに、一度ご相談下さい。
過活動膀胱
40歳以上の男女の8人に1人が過活動膀胱
過活動膀胱は「急に我慢できないような尿意が起こる」「トイレが近い」「急にトイレに行きたくなり、我慢ができず尿が漏れてしまうことがある」などの症状を示す病気です。最近の調査で、とても多くの方がこの病気で悩んでいらっしゃることがわかりました。
- 尿意切迫感
→急に尿意をもよおし、漏れそうで我慢できない。 - 夜間頻尿
→トイレが近い、夜中に何度もトイレに起きる。 - 切迫性尿失禁(尿漏れ)
→急に尿をしたくなり、トイレまで我慢できずに漏れてしまうことがある。
以上のような症状が現れます。
検査と治療について
症状についての問診を行ったあとは、エコー検査(超音波検査)で膀胱などを検査していきます。検査に伴う痛みはありませんのでご安心下さい。
過活動膀胱の治療は、まず、抗コリン薬やβ3(ベータスリー)受容体作動薬などの薬物療法を行うのが一般的です。また、薬物療法は症状を軽減させる対症療法です。治療を始める前に、不安なことはなんでもご相談下さい。病気と今後の治療について十分に理解をした上で、治療を進めていきましょう。