当院からのメッセージ
世の中には性に対する情報が氾濫し、人々の性に対する考え方も開放的になってきました。しかし、主に若年層を中心とする性感染症に関する知識の乏しさは、性行為によって起こるリスク回避の妨げとなり、現代の大きな問題点となっているといっても過言ではありません。
現在の日本では、性感染症は若い女性においてありふれた病気になっています。特別な疾患ではなく、誰もがかかり得る危険性がある感染症です。そして、これはただ単に性器やおりものに異変を生じるだけではなく、不妊症や流産・早産などの原因になります。また、最近では子宮の癌との関係も注目されており、女性にとって軽視できない病気なのです。まずはこのことを十分認識したうえで、性感染症の予防を確実にすることが大切です。
たった一度の軽率な考えと、それによる性行為が、あなたの人生を大きく左右させてしまうことは少なくないのです。自分のために、そしてかけがえのないパートナーのために、性感染症について正しい知識を持ちましょう。それが、性感染症から身を守る「はじめの一歩」となります。
もし仮に、性感染症を疑うような症状がみられたら、あなたの将来やパートナーのためにも、今井産婦人科内科クリニックに遠慮なくご相談下さい。
性感染症の基礎知識
「性感染症」は女性にはあまり関係のない、男性の病気というイメージを持たれがちですが、実際は若い女性にも急速に広まっています。性行為があれば誰でも感染する可能性がある身近な病気です。
「性感染症」について正しい知識を持つことは、女性の健康を守るうえでとても大切です。
性感染症の症状
- 性器がかゆい、痛い。
- 性器に水疱、いぼ、しこりがある。
- 原因が明らかでない発熱や下腹部痛がある。
- 排尿時に痛みがある。
- おりものの色、量、においが普段と異なる。(女性)
- 尿道から膿が出る。(男性)
以上のような症状が出ることで、ご自身の感染を疑う方が多いです。
性感染症(STD)とは
性行為が原因で感染する病気です。性感染症はSTD(Sexually Transmitted Disease)ともいわれ、性行為に伴い、ウイルス・細菌などの病原体に感染することで起こる病気です。夫婦間を含むいかなる性行為でも、男女問わず感染する可能性がある病気の総称とされるものです。
具体的な疾患としては、性器クラミジア感染症、淋病、梅毒、性器ヘルペス、尖形コンジローム、トリコモナス症、AIDSなどがあります。(従来、性病予防法で指定されていた疾患を「性病」と呼んでいましたが、1999年、感染症新法の施行に伴い、従来の性病予防法は廃止されました。)
男性の性感染症
男性では、性器クラミジア感染症・淋病・性器ヘルペス・尖形コンジロームなどのSTDが多くみられます。1992年のAIDSキャンペーンにより、淋病様疾患は一時、減少しましたが、近年また増加傾向に転じています。
性器クラミジア感染症はわずかな増加、性器ヘルペスは横倍、尖形コンジロームは減少傾向にあります。感染源は、男性の場合、性風俗関係者からの感染が多いものの、一般女性(配偶者など)からの感染もみられます。
女性の性感染症
女性では、性器クラミジア感染症が最も多く、次いで性器ヘルペス、トリコモナス症、淋病様疾患、尖形コンジロームなどがみられます。とくに最近では、性器クラミジア感染症が増加してきており注意が必要です。性器ヘルペスはわずかに増加、淋病様疾患、尖形コンジロームなどは横ばいで推移しいています。以前、多くみられたトリコモナス症は減少しています。
もともと女性の性感感染症患者さんには、風俗関係者の割合が比重を占めていました。しかし、現在ではごく一般の方でも性感染症(STD)と診断される方が増加しており、特に若い世代(25歳未満)の感染者増加が問題視されています。
急増中の性感染症
性感染症増加の背景
最近の統計によると、性感染症は増加しており、特にクラミジア感染症、淋病は急増しています。さらに、この統計は医療機関を訪れた患者数をもとに推計されたものであり、潜在的な感染症者数はこの数倍になると考えられています。
このような性感染症増加の背景としては、性感染症に対する知識・情報を十分に持ち合わせていない状況のなかで、性行為が行われてしまっていることが問題視されています。
また、性感染症には症状が現れにくいものもあるために、知らないうちに他人からうつされたり、逆に他人にうつしてしまうのです。
また一般に、性感染症は男性よりも女性に多いとされています。その原因として、男性とは異なり、女性では性器(膣)の粘膜に病原体が付着しやすいことや、精液を介する感染があることなどによると考えられています。
若い女性に蔓延しているクラミジア感染症
女性の性感染症の中で、クラミジア感染症は最も多く、近年その増加も顕著です。
女性の発生頻度を年齢別にみてみると、最も多いのが20〜24歳(10万人あたり1,254人)、次いで15〜19歳(同950人)、25〜29歳(同920人)となっています。これはそれぞれの年代の女性78人に1人、105人に1人、109人に1人が感染者であることを示しています。
このように、若い女性における蔓延は非常に深刻で、性交開始の低年齢化も大きな要因に挙げられています。そして、人工妊娠中絶例の年齢別分布もこれと同じ状況であり、若い女性における性感染症と人工妊娠中絶の急増は社会的な問題になっています。
女性の健康に大きなダメージを与える性感染症
性感染症の症状としては、男性では排尿時に違和感や痛みを伴うことが比較的多いのに対して、女性では無症状の場合も少なくありません。そのため、気付かないうちに感染し、お腹の中で炎症が進行してしまう場合があります。場合によっては、不妊症・早産・流産などの原因になります。つまり、性感染症による身体的なダメージは男性よりも女性の方が大きいのです。
また、エイズ(HIV感染)やB型肝炎は生命に関わる病気ですが、これらは血液製剤や輸血などのほかに性行為でも感染するため、性感染症に含まれています。
性感染症から身を守るために
不特定の相手との性交渉は避ける
性感染症は、基本的に一人で感染することはなく、必ずパートナーが存在します。また、性行為を行う相手が多いほど、感染する確率は高くなります。そのため、不特定多数のパートナーとの性行為や、性感染症の可能性を否定できないパートナーとの性行為を避けることが、性感染症の予防には最も重要になります。感染の可能性のある相手との性行為を避けることが予防の基本です。信頼できる、お互いよく知っている特定のパートナー以外との性交渉は慎みましょう。
コンドームを使用する
コンドームは、避妊以外に性感染症(STD)の感染予防にも役立つことが知られています。ただし、射精前の分泌液にもウイルスや細菌は存在しているので、コンドームは性行為の最初から最後まできちんと使用しなければなりません。「正しく使用する」ようにしましょう。
B型肝炎は予防接種も
B型肝炎には予防接種(ワクチン)があり、予防に役立てることができます。
また、日常生活の注意を守ることが感染予防につながります。
例)
・傷の手当は自分で行う。
・他人の血液が付着した物に触れない。
・歯ブラシ・カミソリの共有はしない。
など
早めに医療機関を受診する
「もしかしたら感染しているかも…」
「身体に違和感・不快感がある」
「何らかの症状が出ている」という方は、早めに医療機関を受診して検査を受けましょう。
性感染症(STD)は、性病科・泌尿科・皮膚科・内科などで、女性であれば当院のような産婦人科での受診も可能です。
治療はパートナーと一緒に
男性と異なり、女性では無症状の場合も少なくありませんが、必ず医師の診断を受けるようにしましょう。万が一、性感染症と診断され治療を受けても、パートナーが未治療であれば、感染を繰り返すことがあります。
もし、パートナーも感染している場合は、二人そろって完全に治るまで治療を続けましょう。
たとえ、あなたがしっかり治療をして完治したとしても、相手が今もなお感染している状態であれば、状況は変わりません。ご自身だけの治療では、いつまでたっても治癒はされないのです。性交渉によって、再び感染し、状況は繰り返されます。また、症状が治ったからといって勝手に治療を止めてしまうのは禁物です。
エイズの相談窓口
保健所や一部の医療機関で相談・検査を行っています。
感染してHIV抗体ができるまで6〜8週間かかるので、検査は感染したと思われる時点から3ヵ月以降に受けることをお勧めします。結果は、約1〜2週間でわかります。
性感染症の検査は、匿名(無料)で実施されています。
匿名方式によってあなたのプライバシーは守られますので、ご安心下さい。早めに検査を受けましょう。
代表的な性感染症一覧
クラミジア感染症 |
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クラミジア・トラコマティスという病原体により発症します。女性では症状が出にくく、気づかないうちに子宮や卵管に炎症を起こして、不妊症の原因になります。喉に感染することもあります。 |
性器ヘルペス |
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ヘルペス・ウイルスの感染により、性器に強い痛みを伴う水泡、潰瘍などが生じます。一旦感染すると、ウイルスは体内に住み着き、体力が落ちた時に再発する場合もあります。 |
トリコモナス腟炎 |
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トリコモナス原虫の感染により起こり、女性ではおりものが増えたり、外陰部にかゆみを伴います。 |
尖形コンジローム |
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ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で性器に良性なイボができます。HPVには子宮の癌(子宮頸癌)を引き起こすリスクの高いタイプもあります。 |
梅毒 |
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昔の「性病」の代表的なもので、感染初期には性器やリンパ節にしこりなどができます。妊娠中に感染すると、流産や早産を起こすこともあります。 |
淋病 |
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女性では症状が出にくく、不妊症の原因になります。淋菌という細菌の感染により起こります。 |
エイズ(HIV感染) |
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ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が感染して体内で増殖すると、病原菌に対する抵抗力は低下して各種感染症を発症します。クラミジア感染症などほかの性感染症に感染していると、HIVに感染する危険性は通常の3〜5倍高まるといわれています。 |
B型肝炎 |
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B型肝炎の感染様式としては”一過性の感染”と”持続感染”の大きく2つに分けられます。一過性感染は不顕性感染(80%)と急性肝炎(20%)があります。不顕性感染では無症状であることがほとんどで、急性肝炎は黄疸・発熱・肝機能異常などを引き起こします。 |
毛ジラミ・疥癬 |
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シラミやダニが原因で、イン部や全身が猛烈にかゆくなります。 |